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学級新聞_94号

コスモロジーネイチャーポジティブ憲法十七条法華経聖徳太子

学級新聞_94号

【第94号 2026/5/26 発行】
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[1] はばたけ ルリセンチ 
[2] 奈良町御師(おし)コラム
[3]お知らせ

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[1] はばたけルリセンチ No. 91

今週号はお休みです。
次回の掲載をお楽しみに

 

[2]奈良町御師(おし)コラム

 

――聖徳太子の「憲法十七条」は、宇宙と人間の生き方の話だったの?

 

夕方、奈良の庭に少し涼しい風が吹いていた。

中学生のゆういちは、学校の歴史の宿題を広げながら、おばあちゃんに尋ねた。

 

ゆういち
おばあちゃん、聖徳太子って、冠位十二階とか十七条憲法を作った人やろ?

先生は、役人の心得みたいなものって言ってたで。

 

おばあちゃんは、少し笑って首を振った。

 

おばあちゃん
ゆういち、それは間違いではないけどな、それだけで読むと、聖徳太子が考えてたことを小さくしてしまうかもしれへんなあ。

 

ゆういち
小さく? どういうこと?

 

おばあちゃん
まずな、『日本書紀』には、いまよく言う十七条憲法やのうて、憲法十七条って出てくるんよ。ここ、大事なとこなんや。

 

ゆういち
順番が違うだけちゃうの?

 

おばあちゃん
そう見えるけどな、言葉を分けて考えると意味が深くなるんや。
憲っちゅうのは、人の世の中を整えるためののり、つまり規範やろ。
法っちゅうのは、いまの法律とはちょっと違うて、仏教でいうダルマの意味で使われてたとも言われてるんよ。宇宙や命や大地を貫く大きな理(ことわり)やね。

 

ゆういちは、鉛筆を止めた。

 

ゆういち
じゃあ、憲法十七条って、法律の条文じゃなくて、宇宙の真理に合わせて人間がどう生きるか、っていう話?

 

おばあちゃん
そうやなあ、そういうふうにも読めるんちゃうかなあと、おばあちゃんは思うんや。

 

ゆういち
でも、なんで聖徳太子が宇宙なん?

 

おばあちゃんは、机の上に置かれた法隆寺の写真を指さした。

 

おばあちゃん
聖徳太子はな、法華経や勝鬘経をよう学んだ人として伝わってるんや。
法華経には、久遠いうてえらい長い時間とか、三千大千世界いう広い宇宙の考え方が出てくるんよ。
今の世界だけやのうて、人の一生や国の争いよりも、ずっと大きな時間と広がりの中で物事を見る考え方やな。
せやから、その影響を受けてはったとしたら、そういう大きな視点で世の中を見てはったとも考えられるんよ。

 

ゆういち
それって、なんか宇宙物理みたいやな。

 

おばあちゃん
ほんまやね。古代インドの人らは、数字を使うて無量の時間や空間を考えてたんや。
仏教いうのはな、宗教でもあるけど、同時に昔の宇宙の見方でもあったんやと思うわ。

 

ゆういち
それが、憲法十七条とつながるん?

 

おばあちゃん
つながると考えることもできるんよ。
たとえば第一条やな。
和を以て貴しとなす、いうやろ。普通は仲良くしましょうって習うけど、それだけやと少し狭いかもしれへんね。

 

ゆういち
仲良しじゃないん?

 

おばあちゃん
もちろん人と人との調和も入ってるで。でもな、それをもうちょっと広げてみるとやな、
和いうのは、宇宙や地球、国土や草木、命、人の世界まで通じる調和やとも読めるんよ。
人は群れることはできても、本当の調和を知るんは難しいやろ。
せやから親子でもめたり、近所でもめたり、上下でぶつかったりする。
でもな、自然の理に逆らわんと、お互い和らいでいけば、物事は自然と通っていく、そんなふうにも受け取れるんや。

 

ゆういちは、少し考えてから言った。

 

ゆういち
それやったら、聖武天皇の大仏を造る話にもつながるんちゃう?

 

おばあちゃんは目を細めた。

 

おばあちゃん
ええとこ気づいたなあ。

直接同じ言葉やないけどな、考え方としてつながってると見ることもできるんよ。
聖武天皇の詔には、乾坤相泰、動植咸栄いう言葉があってな、天地も動物も植物も、みんな栄えるようにって願うてはるんや。

 

ゆういち
それ、めっちゃネイチャーポジティブやん。

 

おばあちゃん
そうやなあ、いまの言葉で言えばそうやね。
聖徳太子の和の考えが、奈良の時代にはそういうかたちで広がっていった、とも読めるんや。

 

ゆういち
じゃあ第三条は?

 

おばあちゃん
第三条もおもしろいで。
君をば天とす、臣をば地とす、やな。
これもな、ただ従いなさいいうだけやのうて、自然のかたちになぞらえているとも読めるんよ。

 

ゆういち
コスモロジーって宇宙観?

 

おばあちゃん
そうそう。天が覆って、地が支えて、四季が巡って、万物がめぐるやろ。
君と臣もな、上と下の関係いうより、それぞれの役目を果たす関係として考えられてたとも言われてるんや。
自然と切り離されてへん秩序やね。

ゆういちは、ノートに「天・地・君・臣」と書いた。

 

ゆういち
それ、学校で習うよりずっと大きい話やな。

 

おばあちゃん
第四条の礼も同じやで。
ただのマナーやなくてな、仏教の考えを重ねて見ると、ちょっと違う見え方になってくるんよ。

ゆういち
ふきょうぼさつ?

 

おばあちゃん
そう。常に人を軽んじへん菩薩や。
誰の中にも仏になる可能性があるって見て、敬ってはったんや。
憲法にそのまま書いてあるわけやないけど、こういう考えと重ねて読むこともできるんよ。

 

ゆういち
じゃあ第四条の礼って、相手の中の仏さまを見ること?

 

おばあちゃん
そういうふうにも考えられるなあ。
人を道具みたいに扱わんと、その人の中にあるものを大事にする、いうことやね。

 

ゆういちは、急に顔を上げた。

 

ゆういち
それ、AI時代に大事やん。人間を点数とかデータだけで見たらあかん、ってことやろ。

 

おばあちゃん
そうやね。いま風に言えばそういうことにもつながるなあ。
人はデータだけでは計れへん存在や、いうことやね。

 

ゆういち
おばあちゃん、聖徳太子って、政治家だけじゃなかったんやな。

 

おばあちゃん
そうやなあ。制度を作った人として知られてるけど、その背景には仏教の考えもあったと伝わってるんよ。

 

[3] お知らせ

 

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コラム執筆者

川井徳子

株式会社学びの旅 代表取締役。同社の前身である奈良新しい学び旅推進協議会の立ち上げに尽力し、2020年~2025年まで実行委員長を務める。奈良を舞台にした探究型学習プログラム「奈良SDGs学び旅」を企画・開発し、商品化。教育と地域をつなぐ新しい学びの仕組みを創出した。