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学級新聞_96号

ネイチャーポジティブ完全養殖持続可能生物多様性近大マグロ

学級新聞_96号

【第96号 2026/6/23 発行】
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[1] はばたけ ルリセンチ No. 91
[2] 奈良町御師(おし)コラム
[3] お知らせ

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[1] はばたけルリセンチ No. 91

[2]奈良町御師(おし)コラム

 

おばあちゃんは新聞をたたみながら言った。


おばあちゃん
クロマグロが増えてきたらしいねぇ。

 

ゆういちは顔を上げた。


ゆういち
それは良いことなんやろ?

 

おばあちゃん
もちろん良いことや。昔は獲りすぎて、このままやとクロマグロがいなくなるかもしれん、言われとったんや。

 

ゆういち
じゃあ、漁を減らしたの?

 

おばあちゃん
そうや。日本だけやない。中国も韓国もアメリカも、みんなで話し合って、若いマグロを獲りすぎんようにしたんや。その結果、クロマグロは回復してきたんよ。

 

ゆういちは少し考えた。


ゆういち
それなら、海の問題は解決やん。

 

おばあちゃんは笑った。


おばあちゃん
そこが面白いところなんよ。
例えばな、奈良公園の鹿だけをどんどん増やしたら、どうなると思う?

 

ゆういちは少し考える。


ゆういち
鹿が増えて、草を食べて、花も減るかも昆虫も減る?

 

おばあちゃん
そうやね。その可能性はあるなぁ。鹿を守ったのに、自然が貧しくなることもあるんや。
海も同じやで。クロマグロだけ見てたらあかんのや。マグロは魚を食べて、その魚はもっと小さいものや、プランクトンも食べる。海の中では、全部つながっとるんよ。

 

ゆういちは首をかしげた。


ゆういち
じゃあ、クロマグロが増えたら、カツオとかイワシが減るん?

 

おばあちゃん
そう単純でもないんや。海水温も変わるし、海流も変わるし、人間も魚を獲るからなぁ。せやけど大事なんは、一匹の魚だけ見ても、海全体は分からんいうことや。

 

しばらく沈黙が流れ、庭ではアゲハチョウが飛んでいる。


おばあちゃん
ネイチャーポジティブ、あるやろ。

 

ゆういち
知ってるで。自然を良くしていく考え方やろ。

 

おばあちゃん
そうやそうや。それはな、魚を増やすだけやない。魚も、海藻も、プランクトンも、鳥も、人間も、みんながつながったまま元気になることなんよ。

この前のミツバチの話、覚えてるやろ。蜂だけ増やしても花がなかったら困るし、花も土が悪かったら育たん。土だけ良くても、鳥がおらんかったら種は運ばれへん。全部つながっとるんや。

 

ゆういち
なるほどな。全部つながっとる、いうことやな。

 

ゆういちは少し黙ったあと、ぽつりと言った。


ゆういち
クロマグロを守るのは大事やけど、本当に守らなあかんのは、海そのものなんやな。

 

おばあちゃん
その通りやと思うわ。昔の人は海を見て魚を見とったけど、今はその向こうのつながりを見る時代なんやろうね。

 

しばらくして、おばあちゃんは思い出したように言う。


おばあちゃん
そうそう、今度の日曜日はマグロ食べに行こうか。近大マグロや。

 

ゆういち
急やな。養殖のやつやろ?

 

おばあちゃん
そうや。皮肉なことに、クロマグロが回復して天然が増えたら、養殖マグロの値段が下がって採算が厳しいらしいんや。でもな、近畿大学の人らは何十年もかけて完全養殖を成功させたんやで。

 

ゆういち
すごいことなん?

 

おばあちゃん
そりゃすごい。魚を獲るだけやなくて、育てる技術を作ったんやから。

 

ゆういちは少し考えて言う。


ゆういち
ネイチャーポジティブみたいやな。守るだけやなくて、人間も工夫する。

 

おばあちゃん
そして、その工夫が次の世代に残るんやろね。

 

おばあちゃんは立ち上がった。


おばあちゃん
だから応援せなあかんな。

 

ゆういち
マグロ食べて応援?なんか都合ええ話やな。

 

おばあちゃん
世の中、応援の仕方にもいろいろあるんやで。

 

二人は顔を見合わせて笑った。
海を守ること。魚を守ること。人の知恵を守ること。
それらは別々やなく、どこかでつながっている。ゆういちは、そのことを少しだけ分かった気がした。

 

 

[3] お知らせ

 

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コラム執筆者

川井徳子

株式会社学びの旅 代表取締役。同社の前身である奈良新しい学び旅推進協議会の立ち上げに尽力し、2020年~2025年まで実行委員長を務める。奈良を舞台にした探究型学習プログラム「奈良SDGs学び旅」を企画・開発し、商品化。教育と地域をつなぐ新しい学びの仕組みを創出した。