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学級新聞_100号

フェルナン・ブローデル共生和を以て貴しとなす法隆寺長期持続

学級新聞_100号

【第100号 2026/9/29発行】
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[1] はばたけ ルリセンチ No. 98
[2] 奈良町御師(おし)コラム
[3] お知らせ

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[1] はばたけルリセンチ No. 98

[2]奈良町御師(おし)コラム

 

1400年前から世界を見ると?

 

ゆういちは本を読みながら首をかしげた。

 

ゆういち
おばあちゃん、ブローデルって誰?

 

おばあちゃん
フランスの歴史学者やね。フェルナン・ブローデルいう人で、歴史には流れる速さの違う時間があると考えたんよ。

 

ゆういち
時間の速さが違う?

 

おばあちゃん
そうや。ブローデルは、歴史には大きく三つの時間があると考えたんよ。

 

ゆういち
三つもあるん?

 

おばあちゃん
まず一つ目は、アメリカや中国の指導者が何を言ったとか、関税が上がったとか、首脳会談があったとか。そういう毎日のニュースやね。これは短い「出来事の時間」と呼ばれるんや。

 

ゆういち
なるほど。

 

おばあちゃん
二つ目は、経済の仕組みや社会制度、国と国との関係みたいに、何十年もかけて変わるものや。

これは「社会の時間」と考えることができるんよ。

 

ゆういち
三つ目は?

 

おばあちゃん
もっと長い時間や。地理や自然環境、人々の暮らし方、文化や文明の深い部分にあって、何百年たっても簡単には変わらないものやね。ブローデルは、それを「長期持続」と呼んだんよ。

 

ゆういち
じゃあ、ニュースばかり見ていたら、一番短い時間しか見てないんやな。

 

おばあちゃん
そういう見方もできるね。せやから、おばあちゃんは法隆寺から今の世界を見てみたいんよ。

 

ゆういち
法隆寺から?

 

おばあちゃん
法隆寺は1400年近い時間を生きてきたやろ。その時代につくられた十七条憲法の第一条には、「和を以て貴しと為す」と書かれているんや。

 

ゆういち
みんな仲良くしなさい、ってこと?

 

おばあちゃん
それだけやないと思うんよ。十七条憲法には、大事なことは一人で決めず、みんなで議論しなさい、という考え方も見えるんや。

 

ゆういち
1400
年前に?

 

おばあちゃん
そう。ただ、今の民主主義と同じではないんよ。古代の国づくりの時代に、役人たちへ示された規範やからね。

 

ゆういち
でも、話し合えって言っているんやな。

 

おばあちゃん
そこが面白いところや。意見の違う人がおる。利害も違う。それでも、力だけで相手を従わせるんやなくて、どうやって一緒に秩序をつくるのか。そんな問いが1400年前から残されているんよ。

 

ゆういち
今のアメリカと中国も同じ?

 

おばあちゃん
形は違っても、考えるべきことは似ているかもしれへんね。どちらも大きな力を持つ国やけど、それぞれ立場も考え方も違うからな。

 

ゆういち
どっちが正しいの?

 

おばあちゃん
それを決めて教えるのが平和教育やないと、おばあちゃんは思うんよ。

 

ゆういち
じゃあ、何を勉強するん?

 

おばあちゃん
ブローデルの時間で考えてみるんや。

 

ゆういち
どうやって?

 

おばあちゃん
今日のニュースだけ見たら、どちらが勝った負けた、関税を上げた下げた、そんな話になるやろ。でも、50年、100年、1000年という時間で見たらどうやろう。

 

ゆういち
国だって変わってしまうな。

 

おばあちゃん
そうや。今のアメリカ合衆国も、今の中華人民共和国も、ずっと同じ形であったわけやない。国の名前も制度も、歴史の中で変わってきたんよ。

 

ゆういち
じゃあ、国はずっと同じじゃないんや。

 

おばあちゃん
そう。強かった国が衰えることもあるし、国境や制度が変わることもある。でも、人間はずっと「違う人たちとどう生きるか」という問題に向き合ってきたんや。

 

ゆういち
それが長期持続なんやな。

 

おばあちゃん
そう考えると面白いやろ。国の名前や政治の仕組みは変わっても、人と人が協力したり、争いを調整したりしながら社会をつくる課題は残り続けるんや。

 

ゆういち
法隆寺も1400年残ったもんな。

 

おばあちゃん
建物だけやないよ。仏教も建築技術も、海を渡って日本へ伝わってきた。大陸や朝鮮半島から来た文化と、日本の文化が出会って法隆寺になったんや。

 

ゆういち
外国から来たものもいっぱいあるんやな。

 

おばあちゃん
そうや。法隆寺は、異なる文化と出会いながら、自分たちの文化をつくってきた長い時間も見せてくれるんよ。

 

ゆういち
じゃあ、平和って戦争をしないことだけやないんやな。

 

おばあちゃん
おばあちゃんはそう思うわ。違う考えの人とどう話すか。違う文化をどう受け入れるか。意見が対立した時に、力だけやなく、どう共に生きる仕組みをつくるか。そういうことを何世代にもわたって考え続けるのも、平和をつくることなんやと思うんよ。

 

ゆういち
それを法隆寺で勉強するんやね。

 

おばあちゃん
うん。法隆寺を見ながら1400年前へ行って、そこから今の世界を見てみるんや。

 

ゆういち
なんだか、ニュースの見え方が変わりそう。

 

おばあちゃん
それがブローデルから学べることなんかもしれへんね。今日起きていることだけで世界を判断しない。もっと長い時間の中に、自分たちを置いて考えてみるんや。

 

ゆういち
じゃあ、1000年後の人から見たら、今のぼくたちはどう見えるんやろう。

 

おばあちゃん
ええ質問やね。法隆寺で平和を学ぶなら、最後に考えたいのはきっとそこなんよ。

 

ゆういち
ぼくたちは、1000年後の人に何を残すんやろう。

 

おばあちゃん
それを考えることが、長期持続から平和を考えるいうことなんかもしれへんね

 

 

[3] お知らせ

 

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コラム執筆者

川井徳子

株式会社学びの旅 代表取締役。同社の前身である奈良新しい学び旅推進協議会の立ち上げに尽力し、2020年~2025年まで実行委員長を務める。奈良を舞台にした探究型学習プログラム「奈良SDGs学び旅」を企画・開発し、商品化。教育と地域をつなぐ新しい学びの仕組みを創出した。