ヒノヒカリ奈良のお米奈良の食文化柿の葉寿司神話のふるさと
【第99号 2026/9/15発行】
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[1] はばたけ ルリセンチ No. 96
[2] 奈良町御師(おし)コラム
[3] お知らせ
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[1] はばたけルリセンチ No. 96

[2]奈良町御師(おし)コラム
奈良のお米は、なぜ安いの?
ゆういちは新聞の記事を見ながら言った。
ゆういち
おばあちゃん、奈良のお米が、日本でいちばん安いって本当なん?
おばあちゃん
今年、農協が農家さんに最初に支払う概算金では、奈良県産ヒノヒカリが六十キロ一万三千円で、全国でもかなり低い水準なんよ。
ゆういち
安いなら、買う人はうれしいんちゃうの?
おばあちゃん
そう思うやろ。でもな、肥料も燃料も農業機械も高くなっている。これでは、お米を作っても生活が苦しい農家さんも出てくるんや。
ゆういち
じゃあ、お米づくりをやめる人もおるん?
おばあちゃん
そうや。高齢になって後を継ぐ人がおらへんかったり、「来年はもう作れへん」という人も出てくるんよ。
ゆういち
でも、田んぼがなくなっても、ほかの県からお米を買えばええんちゃう?
おばあちゃん
田んぼは、お米を作るだけの場所やないんよ。大雨の水をためたり、生き物を育てたり、村の景色や人のつながりを守ったりしているんや。
ゆういち
お米って、そんなに大切なんやな。
おばあちゃん
日本人にとって、稲は特別な存在なんよ。日本神話では、天照大神が地上の国を治めるために稲穂を授けたと伝えられているからね。
ゆういち
神様からもらったん?
おばあちゃん
そう。秋には新しく穫れたお米を神様にお供えして、人も一緒にいただく。お米は、人と自然、人と神様、人と人をつないできたんや。
ゆういち
奈良には神話の舞台がいっぱいあるよね。
おばあちゃん
そうやね。橿原、三輪、葛城、吉野など、神話にゆかりのある場所が今も残っている。奈良は、日本人がお米をどう大切にしてきたかを伝える土地でもあるんよ。
ゆういち
そんな奈良のお米が安いのは、なんでなん?
おばあちゃん
奈良には良いお米を作る農家さんがおる。でも、そのお米を高く売って、みんなで支える仕組みが十分ではないんやと思うわ。
ゆういち
柿の葉寿司にも、お米を使うやろ?
おばあちゃん
もちろんや。奈良を代表する名産品やね。
ゆういち
じゃあ、奈良のお米をたくさん使ってるん?
おばあちゃん
奈良県産米を使っているメーカーさんもあるけど、県外のお米や複数の産地のお米を使っているところもあるんよ。
ゆういち
奈良のお寿司やのに?
おばあちゃん
柿の葉寿司には、お酢を入れて重石をかけても粒がつぶれにくいお米が必要なんや。量や値段も安定せなあかんから、メーカーさんだけを責めることはできへん。
ゆういち
じゃあ、どうしたらええん?
おばあちゃん
柿の葉寿司に合う奈良のお米を、農家さんとメーカーさんが一緒に研究して育てることやろうね。そして何年も買う約束をして、農家さんが安心して作れるようにするんや。
ゆういち
ホテルや学校でも奈良のお米を食べたらええのに。
おばあちゃん
その通りや。ホテル、旅館、学校、病院、社員食堂。奈良にはお米を食べる場所がたくさんある。でも、その需要と奈良の農家さんが、まだ十分につながっていないんよ。
ゆういち
どうして、つながらなかったんやろ?
おばあちゃん
農業を考える人、観光を考える人、文化を守る人。それぞれが一生懸命やってきたけど、別々に動いてきたからかもしれへんね。
ゆういち
神様のお米も文化なんやろ?
おばあちゃん
そうや。本当は文化であり、産業であり、暮らしそのものなんや。でも、いつの間にか、お米は値段だけで比べられる商品になってしまったんよ。
ゆういち
柿の葉寿司が売れても、奈良の農家さんが助かるとは限らへんの?
おばあちゃん
今のままでは、必ずしもそうとは言えへんね。奈良の名産品が売れても、奈良の田んぼにお金が戻らないこともあるんや。
ゆういち
それは変やな。
おばあちゃん
ほんまにね。熊野の海から届いた鯖、吉野や五條の柿の葉、大和の水で育ったお米。それがそろって、奈良の柿の葉寿司になるんやから。
ゆういち
ぼくが柿の葉寿司を食べたら、田んぼを守れるようになるん?
おばあちゃん
そういう仕組みをつくっていくことが大事なんよ。食べる人が農家さんを支え、農家さんが田んぼを守り、田んぼが奈良の景色や文化を守る。全部つながっているんや。
ゆういち
神様からもらった稲を、ぼくたちが次の人へ渡すんやね。
おばあちゃん
そうやね。日本神話のふるさとでもある奈良やからこそ、お米をただ安い商品として考えるだけではあかんのやと思うわ。
ゆういち
じゃあ、奈良のお米を食べようよ。
おばあちゃん
まずは私たちが食べること。そして、作ってくださる農家さんに「ありがとう」を伝えることやね。
ゆういち
お百姓さん、おいしいお米をありがとう。
おばあちゃん
来年も、その次の年も、奈良の田んぼでお米が作られ続けるとええね。
[3] お知らせ
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川井徳子
株式会社学びの旅 代表取締役。同社の前身である奈良新しい学び旅推進協議会の立ち上げに尽力し、2020年~2025年まで実行委員長を務める。奈良を舞台にした探究型学習プログラム「奈良SDGs学び旅」を企画・開発し、商品化。教育と地域をつなぐ新しい学びの仕組みを創出した。