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学級新聞_93号

中臣鎌足奈良時代日本書紀藤の花藤原不比等

学級新聞_93号

【第93号 2026/5/13 発行】
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[1] はばたけ ルリセンチ No. 92
[2] 奈良町御師(おし)コラム
[3]お知らせ

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[1] はばたけルリセンチ No. 92

[2]奈良町御師(おし)コラム

 

春の奈良。

春日大社の境内には、やわらかな日差しが差し込み、紫色の藤の花が風に揺れていた。甘い香りがふわりと漂い、足元には木漏れ日が揺れている。

 

ゆういち
おばあちゃん、このお花きれいやね。ぶどうみたいに垂れてる。

 

ゆういちが見上げながら言うと、おばあちゃんはにっこり笑った。

 

おばあちゃん
これは藤の花いうんやよ。奈良の春を知らせてくれる、大事な花やね。

 

ゆういち
ふじ?

 

おばあちゃん

そう、藤。昔々、この花の名前を自分の一族の名前にもらった人がおったんや。

 

ゆういちは不思議そうに首をかしげた。

ゆういち
お花の名前を?

 

おばあちゃん
そうや。中臣鎌足いう人や。昔、日本の国のかたちをつくるために、とても大事な仕事をした人やった。

 

ゆういち
その人、お花が好きやったん?

 

おばあちゃんは少し笑って、藤の花を見上げた。

 

おばあちゃん
好きやったかもしれへんな。でも、それだけやない。昔の人にとって藤は、神さまの力を感じる特別な花やったんや。春になると、こうして長く垂れ下がって咲くやろ?まるで天から何かが降りてくるみたいや。

 

ゆういちも一緒に見上げた。

 

ゆういち
ほんまや

 

おばあちゃん
鎌足さんは亡くなる前に、天皇さんから『これからお前の一族は、国を支える大事な家になれ』いう意味を込めて、『藤原』いう名前をいただいたんや。

 

ゆういち
ふじは藤のお花で、はら、は何?

 

おばあちゃん
原っぱの原やね。広い土地、新しい始まりの場所いう意味もある。せやから藤原いう名前には、神さまに見守られながら、新しい国をつくる一族みたいな願いがこもってるんやろうな。

 

ゆういちはしばらく黙って藤を見ていたが、ふと聞いた。

 

ゆういち
でも、その人がいなくなったら終わりやん?

おばあちゃんは、ゆっくりとうなずいた。

 

おばあちゃん
鎌足さんには、二人の男の子がおったんよ。お兄さんの定恵さんは、小さいころに海を渡って、大陸で仏教や学問を学んだ。でも日本に帰ってきてから、若くして亡くなってしまったんや。

 

ゆういち
じゃあ、藤原さんのおうちはどうなったの?

 

おばあちゃん
そこで出てくるのが、弟の不比等さんや。不比等さんはとても頭がよくて、国の仕組みをつくる仕事を進めた。そして藤原氏は、天皇さんのご家族と深く結びついて、だんだん大きな力を持つようになっていったんや。

 

ゆういち
ふひと?

 

おばあちゃん
そう。不比等さんは、国のルールをつくったり、『日本書紀』いう、日本のはじまりを書いた大切な本づくりにも関わったと言われてる。

 

ゆういち
本を書いたん?

 

おばあちゃん
ただの本やないよ。日本はどんな国なんか、神さまや天皇さんの歴史をどう未来に伝えるかを考えた本や。

 

ゆういちは藤の花を見上げながら、小さくつぶやいた。

 

ゆういち
じゃあ、このお花見ながら、未来のことも考えてたんかな。

 

おばあちゃんは、少し目を細めた。

 

おばあちゃん
そうかもしれへんな。春日の藤は、昔から人の祈りや願いを見てきたんやろう。こうしてあんたと一緒に見てることも、きっとどこかでつながってるんや。

 

春の風が吹き、藤の花房が静かに揺れた。

まるで千三百年前の人々の想いが、そっと語りかけてくるように。

 

◼️元ネタ

7世紀、日本の国家形成が大きく動く中で活躍した中臣鎌足は、最期に天智天皇から「藤原」の姓を授かった。これは単なる褒賞ではなく、国家を担う新たな家としての使命を与えられる意味を持っていた。

当時、「姓」は王権が一族に与える政治的な位置づけであり、祭祀を担っていた中臣氏は、この瞬間に国家経営を担う藤原氏へと転じた。

「藤」は神が宿ると考えられた特別な植物であり、繁栄や結びつきの象徴でもあった。「原」は新たな始まりの場を意味する。藤原という名には、神意に支えられながら新しい国を切り拓く一族という願いが込められていたと考えられる。

鎌足の死後、その家を継いだのは次男の不比等である。不比等は律令国家の制度づくりに関わり、『日本書紀』の編纂にも参与したとされる。神祇に根ざした中臣氏の伝統を保ちながら、新しい国家の形を整えていった。

藤原の名は、一人の功績にとどまらず、日本の政治と文化を長く支えることになる一族への、未来への委任でもあった。

 

 

 

[3] お知らせ

 

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コラム執筆者

川井徳子

株式会社学びの旅 代表取締役。同社の前身である奈良新しい学び旅推進協議会の立ち上げに尽力し、2020年~2025年まで実行委員長を務める。奈良を舞台にした探究型学習プログラム「奈良SDGs学び旅」を企画・開発し、商品化。教育と地域をつなぐ新しい学びの仕組みを創出した。