伝統建築思想円大神神社直線箸墓古墳規矩
【第86号 2026/2/3 発行】
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[1] 奈良SDGs学び旅 問合せ報告/実施報告
[2] はばたけ ルリセンチ No. 85
[3] 当社代表取締役によるコラム
[4] お知らせ
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[1]奈良SDGs学び旅 問合せ報告/実施報告
●問合せ報告
実施日不明 高知県 中学校 15人
●実施報告
[2] はばたけルリセンチ No. 85

[3]当社代表取締役によるコラム
規矩という名の宇宙
――昔の人は、世界をどうやって考えていたのだろう――
伝統建築の技術をユネスコ無形文化遺産に登録する活動に関わっていた折、数寄屋・茶室研究の第一人者で京都工芸繊維大学名誉教授の中村昌生先生から、たくさんのご指導を受けることができました。
その中村先生に、「先生、もし伝統建築の技術をひとつだけ挙げるなら、最も大切なものは何でしょう。」と尋ねたことがあります。
中村先生は、「川井さん、それは“規矩”じゃよ。大工の技術は規矩が基本なんだ。」、と話されました。
今日は、その規矩(きく)について考えてみたいと思います。
むかし、日本には文字がなかった時代がありました。
でも、文字がなかったからといって、人びとが何も考えていなかったわけではありません。
むしろ、宇宙、つまり天と地やこの世とあの世のことなどを深く考えていたからこそ、文字以外の方法で残し人々に伝える努力をしたのです。世界中に広がる神話もその一つです。
奈良県にある大神神社(三輪さん)は、神社なのに本殿がありません。
山そのものが神さまだと考えられてきました。
これは、人と自然がまだ分かれていなかった時代の考え方です。
山も、人も、同じ世界の一部だったのです。
その三輪山の近くに、箸墓古墳という大きなお墓があります。
この古墳は日本で最初の前方後円墳。
後ろが丸く、前が四角に近い、不思議な形をしています。
この形は、たまたまできたものではありません。
丸い形は、きれいな円でなだらかに積みあがった形をしています。
元々山だったのではなく、人々が土を集めて山を作ったのが古墳です。
円を作るには、中心を決め、同じ長さをぐるっと回る必要があります。
それを何層にも、大きさを変えて同心円を積み上げていったのです。
まっすぐな形も、考えなしには作れません。
つまりこの古墳は、よく考えて、正しく測って作られているのです。
中国では、昔から
・円をえがく道具を「規(き)」
・まっすぐな線を引く道具を「矩(く)」
と呼びました。
円は「天」、空や宇宙を表し、
直線は「地」、大地や人の世界を表すと考えられていました。
中国の神話に出てくる伏羲(ふっき)と女媧(じょか)という神は、
この「規」と「矩」を持って、世界を整え、人間を生んだとされています。
もし、この考え方が日本にも伝わっていたとしたらどうでしょう。
箸墓古墳の
「丸(天)」と「まっすぐ(地)」の形は、
世界そのものを表した形だったのかもしれません。
この二人の男女の神様、上半身は人間で下半身が蛇となっています。
日本書紀にはヤマトトトビモモソヒメが大物主神(三輪山の蛇神様)と結婚した話があります。それと深く重なっているように思います。
さらに日本書紀は、箸墓古墳について
「昼は人が造り、夜は神が造った」と記しています。
これは、昼は人が働いて土を運び、形を作り、
夜は神がその場所に意味を与えた、ということと読めるでしょう。
つまり昔の人は、
「自分たちだけで世界を作った」とは思っていませんでした。
人の力と、見えない力が一緒になって、世界ができる
そう考えていたのです。
この考え方は、後の時代の大工さんたちにも受けつがれました。
法隆寺や東大寺など、仏教建築に関わる大工さんが使う「規矩(きく)」という技術は、
ただ長さを測るためのものではありません。
建物を建てるとき、
・どこが中心か
・人が安心して暮らせるか
・自然とぶつからないか
そうしたことを考えながら、
世界の中に「正しい場所」を作る技術だったのです。
そして天と地をつなぐ重要な「聖なる空間」を産み出したのです。
だから昔の大工は、
ただの作業をする人ではなく、
世界を整える大切な役目を持った人でした。
円と直線。
それは図形ではなく、
「人と自然がどう生きるか」を考えた答えでした。
規矩という名の宇宙は、
いまも、私たちの住む家や町の中に、
静かに残っているのです。
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代表取締役 川井徳子
株式会社学びの旅 代表取締役。同社の前身である奈良新しい学び旅推進協議会の立ち上げに尽力し、2020年~2025年まで実行委員長を務める。奈良を舞台にした探究型学習プログラム「奈良SDGs学び旅」を企画・開発し、商品化。教育と地域をつなぐ新しい学びの仕組みを創出した。