SDGsトラウマ世代継承平和教育戦争権力性(暴力性)
【第78号 2025/10/14 発行】
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[1] 奈良SDGs学び旅 問合せ報告/実施報告
[2] はばたけ ルリセンチ No. 77
[3] 当社代表取締役によるコラム
[4] お知らせ
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[1]奈良SDGs学び旅 問合せ報告/実施報告
●問合せ報告
実施日2025/11/07 海外 大人 20人
実施日2025/10/31 神奈川県 大人 ?人
●実施報告
実施日2025/10/1 東京都 高校 東大寺コースF/W 118人
実施日2025/10/1 東京都 高校 オンライン講義 43人
実施日2025/10/2 島根県 中学校 3コースF/W 43人
[2] はばたけルリセンチ No. 77

[3]当社代表取締役によるコラム
平和教育の再構築に向けて──SDGsの理念に立脚した新たな視座
日本における平和教育は、戦後一貫して社会科教育の中心テーマの一つとして位置づけられてきました。広島・長崎・沖縄といった、戦争の記憶を色濃く残す地域は、京都・奈良と並んで修学旅行の主要な目的地です。これらの地で行われる学びは、「戦争の悲惨さ」を体験的に理解させることに重きを置く傾向がありました。たとえば、語り部(戦争体験者などからの証言)による証言や被爆遺構(被爆当時の構造物や遺物)を見学することは、子どもたちに深い印象を与え、平和の尊さを実感させる教育手法として定着してきました。
しかし、私は2025年に広島で開催された国際シンポジウム「平和教育の多様性と体系化シンポジウム」に参加した経験を通じて、従来の平和教育の枠組みに対して再考が必要だと感じました。シンポジウムには、国内外の研究者や教育実践者が参集し、平和教育のあり方についてさまざまな角度から議論がなされました。特に印象に残ったのは、海外のパネリストが提示した「平和教育そのものが権力性や暴力性を内包しうる」という視点です。
この指摘は、平和教育が一方向的な価値観の押し付けになり得る危険性を示唆しています。言い換えれば、戦争の悲惨さを強調しすぎるあまり、子どもたちの主体的な思考や健全な成長を阻害する可能性がある、ということです。
実際、野島大輔氏(関西学院千里国際中・高等部所属/立命館大学客員協力研究員としても活動)による研究では、大人側は「戦争の悲惨さを世代継承したい」という願いを強く抱く傾向にある一方で、子どもたちは「なぜ戦争が起きたのか」という因果関係に関心を示す傾向があると指摘されています(国際的な危機の時代に対する 現代平和教育の応接力の再生 野島 2024)。このギャップは、教育内容を再構築する際の重要な示唆となるでしょう。
さらに、OECD(経済協力開発機構:Organization for Economic Co-operation and Development)が発表したワーキングペーパー”Improving education outcomes for students who have experienced trauma and/or adversity”(トラウマや逆境を経験した生徒の教育成果の向上)』によれば、トラウマや逆境を経験した生徒に対しては、教育システムとしての配慮が不可欠であるとされています。
この報告書では、逆境やトラウマが学習・感情面に与える影響、その緩和要因、さらには実践的な支援方法(例:ソーシャル・エモーショナル・ラーニング、マルチティア支援、多部門連携など)が紹介されています。こうした視点から見ると、戦争の悲惨さを過度に強調する教育は、感受性の高い子どもたちに心理的負荷を与え、学習意欲や自己肯定感を低下させるリスクを持つと言えます。
したがって、平和教育は単なる「悲惨さの伝達」にとどまらず、子どもたちが自らの視点で平和を構築する力を育むものでなければならないと考えます。
現在、奈良教育大学の教員をはじめ有志のメンバーと、SDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)の理念に立脚した平和教育の研究を進めています。この研究では、平和教育を、環境問題をはじめとする SDGs 全体の枠組みの中に据え、「平和と公正」の観点から論じることを目指しています。SDGs は、2015年に国連加盟国が採択した「持続可能な開発のための17の目標」であり、平和・人権・教育などが相互に関連するものと位置づけられています(例:目標 4「質の高い教育を提供する」、目標 16「平和と公正をすべての人に」など)。こうした視点で平和教育を捉えることで、単に過去を記憶する教育から、未来志向で社会をつくる教育への転換が可能になると考えます。
私たちは今、平和教育に新たな視点を導入し、教育の目的を「平和の構築」へとシフトさせる局面に立っています。すなわち、子どもたちが自らの言葉で平和を語り、異なる価値観を尊重し合いながら共生する力を育む教育です。従来の枠組みにとらわれず、国際的な知見を取り入れながら、地域に根ざした実践を重ねていくことが、これからの平和教育の鍵となるでしょう。
[4]お知らせ
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代表取締役 川井徳子
株式会社学びの旅 代表取締役。同社の前身である奈良新しい学び旅推進協議会の立ち上げに尽力し、2020年~2025年まで実行委員長を務める。奈良を舞台にした探究型学習プログラム「奈良SDGs学び旅」を企画・開発し、商品化。教育と地域をつなぐ新しい学びの仕組みを創出した。