奈良公園循環システム春日山原始林殺処分生物多様性避妊ワクチン鹿
【第77号 2025/10/02 発行】
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[1] 奈良SDGs学び旅 問合せ報告/実施報告
[2] はばたけ ルリセンチ No. 76
[3] 当社代表取締役によるコラム
[4] お知らせ
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[1]奈良SDGs学び旅 問合せ報告/実施報告
●問合せ報告
実施日2027年度 東京 中学校 150人
●実施報告
実施日2025/9/18 兵庫県 中学校 オンライン講義 173人
実施日2025/9/25 島根県 中学校 オンライン講義 43人
実施日2025/9/27 兵庫県 中学校 3コースF/W+総括 173人
実施日2025/9/30 東京都 高校 オンライン講義 119人
[2] はばたけルリセンチ No. 76

[3]当社代表取締役によるコラム
鹿と森の未来──72万頭の命が問いかけるもの
前回は、日本の森林が高齢化している現状や、鹿による食害を防ぐために年間72万頭もの鹿が殺処分されている実態について述べた。奈良の春日山原始林も同様に高齢化しており、その背景には鹿の個体数が増加しすぎていることがある。
奈良において鹿は、古来より神の使いとして尊重されてきた。それは、鹿に象徴される生き物の命を慈しみながら、自然との共存関係を学ぶための仕組みであり、現代で言うところの「古代版環境教育」であった。
したがって、鹿と同様に春日山原始林を中心とした広葉樹の芽吹きも守り育てていく必要がある。奈良公園の課題は、鹿か森かの二者択一ではなく、鹿と森の双方に「未来」を見出し、地球環境を学ぶ場としてこの空間を捉えることにある。
ゆえに、奈良公園の管理体制は鹿の頭数の論理ではなく、生物多様性を基盤とした持続可能な奈良公園のあり方を研究することが求められる。それを通じて、日本の森林をよみがえらせる道筋が見えてくるのではないか。
持続可能な森とは、多様な植物が繁茂し、花が咲き、ハチが飛び、実りを鳥が運び、落ち葉が土を育てる——そのような循環が継続する森である。私たちは、最小限の介入によってこの循環システムを構築する必要がある。
幸いにも、奈良公園は世界的にも稀有な条件を備えている。天然記念物としてすべての鹿が人の手によって守られ、食肉に供されることがない環境——すなわち「命を奪わない」場である。
新たに生まれる頭数を抑制することで、鹿の個体数の自然減を目指す。鹿の頭数が制限されることで、森の若木の成長が促進される。そのために、以下の三つの柱が重要となる。
①鹿の健康と尊厳を守る
②森の多様性を増やす
③市民とともに「見える化」して学び合う
第一の柱は、繁殖を静かに食い止めることである。海外では、野生動物に対して避妊ワクチンを接種することで繁殖を食い止めている。
たとえば米国では、繁殖を司るホルモンに対するワクチンによって繁殖スイッチを抑えている。また、別のワクチンでは卵子が受精しにくくなる仕組みが採用されている。これらは命を奪うことなく、群れの健全性を保ちながら出生を抑えることが可能である。
しかしながら、これらのワクチンは日本では未承認である。その結果、毎年72万頭もの鹿の命が奪われているのが現状である。
奈良で「鹿のワクチン特区」を申請し、少数の雌鹿に対して安全性と効果の小規模検証を実施するのはいかがだろうか。局所反応や行動への配慮を行いつつ、痛みや恐怖を与えることなく、徐々に鹿の頭数を削減することに挑戦するのだ。
この取り組みを通じて、森の再生を観察することが可能となる。鹿の侵入を防ぎ、芽生えを守る取り組みはすでにいくつかの場所で始まっている。そこに季節ごとに花のなる木や実のなる木を混植し、ハチや蝶、鳥たちの食卓を増やしていく。鹿は外から静かに眺め、私たちは中で小さな森の保育を続ける。点が線に、線が面に広がる頃、森の多様性が少しずつ回復していくのである。
公園の外側では、農地や里山の暮らしも脅かされている。緩衝帯における出入口管理や誘導柵の設置によって、公園内の静けさと外側の生業の双方を支えることが重要である。
鹿は問題ではなく、人間の経済合理性のために排除される被害者である。むしろ、自然環境の在り方を人間に教えてくれるパートナーとして捉えるべき存在である。
鹿の暮らしに耳を澄まし、森の鼓動に手を当てる。命をいつくしむことは、たとえ歩みがゆっくりであっても、命を軽んじることなく、長く続けていくことができる。
奈良から発信するこの方法は、鹿の命を奪うことなく、日本の森を若返らせる可能性を秘めている。
子どもたちに、動物の命を奪うことなく、日本の森を再生する方法を伝えること——それこそが、私たちの役割ではないだろうか。森が若返り、鹿が穏やかに草をはみ、花粉を運ぶ小さな羽音が戻ってくる——その未来を。
[4]お知らせ
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代表取締役 川井徳子
株式会社学びの旅 代表取締役。同社の前身である奈良新しい学び旅推進協議会の立ち上げに尽力し、2020年~2025年まで実行委員長を務める。奈良を舞台にした探究型学習プログラム「奈良SDGs学び旅」を企画・開発し、商品化。教育と地域をつなぐ新しい学びの仕組みを創出した。