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学級新聞詳細

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学級新聞_49号

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【第49号 2024/8/14 発行】
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[1] 奈良SDGs学び旅 問合せ報告/実施報告
[2] はばたけ ルリセンチ No. 48
[3] 実行委員長コラム
[4] 奈良教育大学・中澤静男先生が奈良市観光協会より表彰されました
[5]お知らせ

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[1]奈良SDGs学び旅 問合せ報告/実施報告
●問合せ報告
・2024/10/17 福井県 小学校 13人
・2026/5/13 石川県 中学校 240人
・2026/5/13 石川県 中学校 137人
●実施報告
なし

 

 

[2] はばたけ ルリセンチ No.48
イメージ

 

 

[3]実行委員長コラム

「いのち」をテーマとした関西・大阪万博の開催まで、残り240日ほど。
間もなく開幕ですね。
今回の万博では、ノーベル賞を受賞された山中伸弥京都大学教授の、IPS細胞に注目が集まっています。人類の寿命はどこまで伸びるか、Well-beingについて、個人や社会の良い状態、健康と生活の豊かさといったことが大きくクローズアップされています。
一方で、人類の「いのち」だけがフォーカスされ、地球環境の未来を考えるという点があまり重視されていないように感じ、残念に思います。
生命(いのちあるもの)と物質(いのちのないもの)の類似性と本質的差異について「物理学」・「熱力学」の視点で鮮やかに説明した研究者がいました。
ベルギーの物理学者、プリゴジン博士です。
彼は非平衡熱力学の研究で知られ、散逸構造の理論で1977年にノーベル化学賞を受賞しました。
(個人的にはなぜ化学賞なのかと思いますが…)
あるとき、プリゴジン博士と共同研究者は、非生物にもかかわらず、自己組織化のようなふるまいをする物質の存在に気が付きました。その物質は液体で一定の温度になると急に対流を発生させ、上から見るとハチの巣のような形になります。
無生物にも生物のような自己組織的な現象があるのです。
生命を持たない物質は、時間と共に無秩序化に向かいます。岩石が崩壊する、熱いお茶が冷めていくなど、どれもエントロピーが増大して無秩序化する法則です。
しかしながら、自然界の中には、局所的にエントロピーが小さくなる、つまり秩序をもつ場合があります。
例えば、川の流れの中で発生する渦巻です。川は山上から流れて、最後は海と交わるのですが、その流れが緩やかになるところ、カーブになるところなどで、流れを押し返して渦を巻くことがあります。海に入り込む時も、渦潮が起きたりします。川の流れは、一方的に高いところから低いところに行くのではなく、場所によって押し戻されたりということがあります。エントロピーが小さくなるところが生まれるのです。

よく似た動きとして、太陽フレアなどがあります。
プリゴジン博士は、散逸構造(自己組織化)のような命を持たない物質でもこのように普遍的な動きをすることを証明し、業績をあげました。
一方で、いのちあるものは、単細胞生物でも人間でもすべて、食物を外から得て、エネルギーや細胞組織の再生などに変化させる機能、つまり自己組織化力を持っています。生命は一つの「システム」として、いのちが終焉するまで、働き続けるシステム自己組織化力を持っているのです。
命には必ず死があります。終わりを迎えた瞬間に崩壊、単なる物質となってエントロピーが増大して崩壊(腐敗)が起きます。
一方で、命は「種」という点で、子孫をはぐくみ、引き継がれていくこと、DNAが再生されることで存続し続けていきます。死によって新しい命が生まれ、その場所を次世代に譲り、継承する。これが生物の理とも言えます。翻って考えてみると永遠の命にあこがれること、不死とは生物としてとても不健全な存在ともいえるのです。

20世紀の日本人の物理学の知識は、原子や宇宙の成り立ちばかりに偏っていて、物理学を以ていのちや自然をどのようにとらえ直し、数式で表現できるか、という理論・散逸構造論の世界が無いように思います。
プリゴジン博士の有名な著作が、『混沌からの秩序』です。このタイトルは、「一般的に物質はエントロピーが増大すること=無秩序な方向にいくのとは異なって、秩序が生まれることがあり、それが散逸構造だ」ということを、一言で表していると考えます。この本は、世界13か国で翻訳されました。特に米国での出版では、著者ではなく未来学者のアルビン・トフラーが「はじめに」を書き、本書の価値を解説しています。
「可逆的な時間と不可逆の時間、無秩序と秩序、物理学と生物学、偶然と必然、これらすべてを同一の新しい枠組みの中に入れ、これらのものの相互関係に注目するとき、雄大な所説が作られた。」
引用:『混沌からの秩序』I・プリゴジン著, I・スタンジェール翻訳,みすず書房,1987年

そして、この本が物理学、化学だけでなく、都市や社会構造、政治や文化などを分析する理論としても有効であると考えていることが文脈から読み取ることができます。
持続可能な社会を実現するには、人類が地球を無秩序にむさぼり利用し続ける現在の状況を変えなくてはなりません。それにはプリゴジン博士が提示してくれたような生物と無生物の関係を確認しつつ、人類全体が秩序ある議論の足場を見つける努力が必要ではないでしょうか。
今日まで、ところどころで対流を繰り返すダイナミズムを持つ非生物の川も最終的には海へと流れ込むという、大自然の摂理を理解するためのシステムをテーマとした話は殆ど出てきませんでした。この万博をきっかけとして、いのちと大自然、いのちの不思議について、語り合える機会を増やすことが大切なことのように思います。
太陽は核融合反応によって表面の黒点などの状態が刻一刻と変化する巨大なエネルギーの塊です。表面の黒点の周辺で発生する爆発現象を太陽フレアと呼び、いま世界的な関心が集まっています。太陽が放出する電磁波や高エネルギー粒子は、最短で約8分という短い時間で地球に到達し、通信インフラや電力網などに障害をおよぼす恐れがあるからです。しかも、太陽は2025年に活動のピークを迎えるともいわれています。太陽フレアが地球環境や私たちの暮らしにもたらす影響は、とても大きいといわれています。
雲や台風などの生成と消滅は散逸構造と深くかかわっています。
確かに台風の発生から消滅まで、いのちあるようなふるまいをしているし、風に流されていく雲は生き物のような動き方をしていますね。生態系も、生物が単一細胞から多細胞生物へと進化するにつれて、より高い秩序をともなって複雑化する方向で進化してきました。
同様に、人間という生物が作る社会も、人類の自己組織化の複雑さと共により高度なものへと変化しつつあります。社会も生物と同様にシステムであり、自己組織化を図ることで普遍的広がっています。
これらは、地域それぞれの固有の文化と深くかかわっています。文化も一つのシステムであり、自己組織化により複雑に高度に発展してきたものだからです。

世界統一国家といった実現不可能なことを望むわけではありません。人類だけでなく、地球の環境を秩序として守り、そのために様々な試練を人間社会が受け入れるには、人間の行動原理から変えていかなくてはならない、それには文化が重要でその相互理解の足場を築いていく必要があるでしょう。
プリゴジン氏の著作、『混沌からの秩序』では、生物と無生物の問題だけでなく開放系か非開放系か、エネルギーはどうか、自己組織化はどのような動きをするかといったことを通じて、社会システムについても深く考察しています。
万博の「いのち輝く未来社会」というテーマについて、生物と無生物の関係や、太陽という無生物が地球全体の命の源として存在していることが大きくテーマとしてクローズアップされることを祈っております。

 

 

[4]お知らせ
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