【第45号 2024/6/18 発行】
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[1] 奈良SDGs学び旅 問合せ報告/実施報告
[2] はばたけ ルリセンチ No.44
[3] 実行委員長コラム
[4]お知らせ
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[1]奈良SDGs学び旅 問合せ報告/実施報告
●問合せ報告
・2025/04/-- 石川県 -- 150人
・2025/09/03 島根県 -- 58人
・2025/11/04 埼玉県 高校 40人
・2025/11/20 岡山県 小学校 41人
●実施報告
・2024/06/07 大阪府 中学校 3コースフィールドワーク 238人
・2024/6/08 奈良県 中学校 リアル講義+フィールドワーク 38人
・2024/06/11 奈良県 中学校 リアル講義+フィールドワーク 131人
[2] はばたけ ルリセンチ No.44
[3]実行委員長コラム
SDGsと消滅言語
前回は日本の伝統建築の現実について解説してみました。
建築の技術が失われるという問題は、持続可能な社会づくりに深くかかわっていると知っていただきたいからです。
なぜなら、日本の数多くの世界文化遺産・伝統木造建造物が残っても、建築の技術が失われれば、それを維持継承することができず、早晩一つの民族の体系・空間とその生活文化が失われるからです。
以前に、伝統建築工匠の技を消滅言語と比較してお話ししました。言語が消えていくことに関し、ユネスコから警鐘が鳴らされています。
2023年7月の時点では、世界の242カ国で7,168の言語の存在が確認されています。そのうちの4割は、使用者が1,000人未満とごく少数で、消滅の危機に瀕しています。
言語が消えるという生々しい様子を伝えるドキュメンタリー作品に、「アウラ 未知のイゾラド 最後のひとり」があります番組の紹介では、このような内容が語られています。
30年前、アマゾンの深い森からこつ然と現れた素っ裸の2人の男。ブラジル政府はアウレとアウラと名付け保護した。だが2人の言葉は未知の言語で、誰一人理解できなかった。ある言語学者が周りのものを一つ一つ指しながら30年かけて800の単語の意味を探り当てた。やがてアウレが死亡。最後の一人となったアウラの調査を続ける中で、彼が、自分たちの部族に起きた「死」について語っていることが、明らかになっていく…。
※出典:NHKオンデマンド公式サイト
NHKスペシャル 「アウラ 未知のイゾラド 最後のひとり」 - 動画配信 (nhk-ondemand.jp)
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2018093652SA000/index.html
この番組は、淡々とカメラが回りナレーションが入っているだけなのですが、最後の一人となった男性の生活を浮き彫りにしています。見る者は、何とも言えない寂寥感におそわれます。社会には数多くの人間が生きていますが、その誰とも親密な関係構築ができない、絶望的な孤独の中に主人公「アウル」はいます。
元々は数十人の集団だったようですが、何かの原因で殆どの人々が死んでいったのだろうと推測されます。ブラジルの憲法は先住民に対して、彼らの伝統的な土地で生活する権利を認めており、アマゾンにはこのような少数先住民の集団が数多く存在します。
しかし、このような先住民は、ブラジル社会の都市化でアマゾンのジャングルの伐採が進む中、活動範囲の限定や次々と広がる感染症等で、生活が脅かされているのです。
別のドキュメンタリー番組では、アマゾンのガリンペイロ(金鉱採掘人、発掘人のこと。主に、ブラジル・アマゾン奥地で1970年代に起きたゴールドラッシュ以降に流入し、過酷な生活・労働環境下で一攫千金を夢見る人々。)が紹介されています。このシリーズを見ることで、消滅言語が伝える社会の状況を知ることができます。
ユネスコでは、言語が消える原因として、下記の3つを挙げています。
①都市化の進行
②経済力の集中
③文化の均質化
アマゾンの先住民の場合は、都市化の進行が大きな理由となっています。
逆に言えば、先住民の存在はアマゾンの大森林を守り育ててきたとわかります。森林を破壊することなく、人類と大自然との共存を可能してきたのは彼らのライフスタイルなのです。
実はあまり話題になりませんが、日本にも、消滅した言語に『御所ことば』があります。これは、平安時代の貴族達が使っていた言葉から産まれた宮中の女房用語で、NHKの大河ドラマ『光る君へ』にも登場します。
やがて、戦後の華族制度の廃止により日本から貴族階級が消え、一部の門跡尼寺や京都に残った貴族の系譜を持つ御家柄でも使われなくなったため、冷泉家の奥様以外は話せる人がいなくなりました。
このようにして、千年を超える貴族の文化・祭儀や遊びを通じて息づいていた宗教や世界が、ひっそりと消滅しました。
同様に、日本の伝統建築の技術も、消滅の危機に瀕しています。
かつて日本では、大森林を利用して巨大な木造建造物を建設していました。やがて、大森林がほとんど無くなったため、最初は台湾に、現在はアフリカに木材を求めています。
一方で、日本全体で建築のための木材需要も減少しており、植林で大切に育てられてきた森林が未利用なままです。日本のような豊かな先進国であっても、畳の上で生活する豊かさや茶道・華道と触れ合う習慣が徐々に失われ、木造建造物を維持することが困難となっています。戦後の政府主導の「文化の均質化」を推し進めた結果、と言えるかもしれません。
NHKによるアマゾンの先住民のドキュメンタリー作品は、複数制作されています。『持続可能な開発』とは何かを改めて考え、消えようとしている日本文化の意味と価値について改めて考え直す機会を与えてくれる、素晴らしい教材のように思います。
皆さんも、ぜひご覧ください。
[4]お知らせ
●学び旅学級新聞の感想を募集しています!
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皆様のご応募、お待ちしております。
【応募先】manabi-jimukyoku@kirsite.com
●学び旅学級新聞へ掲載する記事募集中!
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無料で記事として掲載し、配信いたします。
配信時期についてもお問合せください。
【連絡先】manabi-jimukyoku@kirsite.com
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配信:奈良新しい学び旅推進協議会・事務局
(公益社団法人ソーシャル・サイエンス・ラボ内)
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