第20号 2023/6/6 発行
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◆目次
[1] 奈良SDGs学び旅 問合せ報告/実施報告
[2] はばたけ ルリセンチ No. 19
[3] 実行委員長コラム
[4] ラジオでの放送が決定しました!
[5] お知らせ
[1]奈良SDGs学び旅 問合せ報告/実施報告
実施日 | 地域 | 区分 | 人数 |
2024/2/21 | 神奈川県 | 小学校 | 81 |
未定 | 大阪府 | 企業 | 10~150 |
実施報告
実施日 | 地域 | 区分 | 内容 | 人数 |
2023/5/31 | 神奈川県 | 中学校 | オンラインSDGs講義 | 227 |
[2] はばたけ ルリセンチ No. 19
[3]実行委員長コラム
前回は古都奈良の世界文化遺産についてお話ししました。
ところで、世界文化遺産の活動はどのようにして始まったのでしょうか。この世界文化遺産の考え方「国際的なレベルで文化遺産を守っていかなくてはならない」という意識は、皮肉にも戦争による文化遺産の破壊がきっかけでした。
1874年、赤十字の創設者であるアンリ・デュナンは、ロシアを主催国としてベルギーのブリュッセルで外交会議を行いました。デュナンは捕虜の保護等に関して、「戦時下の国際関係における全般的解決」を目指していました。しかし、ロシアの思惑とデュナンの戦争に対する思いは全く違っていました。会議の進行中、デュナンは次のように語っています。『赤十字の創設者・アンリ・デュナン伝 赤十字はこうして生まれた』より引用します。
会議は今週中にけりがつくだろう。私は終始ロシアと戦ってきた。なぜなら、ロシアが戦争法規の制定を望んでいるからだ。彼らは、戦争は人類にとって通常の状態であり、これからもずっとそうだという考えを人々に受け入れさせようとする。私と捕虜のための委員会(と負傷軍人のための委員会)が、戦争の避けがたい恐怖を軽減したいと切に願っているにもかかわらずだ。戦争とは、次世代の人々からすれば、恐らく狂気でしかない、恐ろしい惨劇なのだ。(ピエール・ボワシエ 2018:69)
この会議は、文化遺産保存のための世界初の国際会議となりました。今から150年も前に彼は未来の人々の思いをかなえたいと松明を掲げていたのです。敵味方関係なく、戦争で傷ついた人を救うことと同様に、人類の営みの結果として生み出された文化遺産も保護すべきだとデュナン氏は訴えたのでした。これはユネスコ(国連教育科学文化機関)精神の萌芽ともいえるでしょう。
「紛争から文化遺産を守る」ということから始まったことからすると、現在、世界の文化遺産の中で最も危機に直面しているのはウクライナの世界文化遺産といえるでしょう。ウクライナには7つの世界文化遺産が登録されています。
■ウクライナの世界文化遺産リスト
⑴ キエフの聖ソフィア大聖堂と関連する修道院群及びキエフ・ペチェールシク大修道院
⑵ リヴィフ歴史地区
⑶ シュトルーヴェの測地弧
⑷ ブコビナ・ダルマチア府主教の邸宅
⑸ ケルソネソス・タウリケの古代都市とその農業領域
⑹ ポーランドとウクライナのカルパティア地方の木造教会群
⑺ オデーサ歴史地区
中でも7番目の「オデーサ歴史地区」はロシアによる侵攻後の2023年に港湾都市としてユネスコの世界文化遺産に登録されました。オデーサは「黒海の真珠」とたたえられ、18世紀後半から19世紀にかけての港町の面影を残しています。
世界文化遺産として登録されるためには「顕著で普遍的な価値を有する」という10の評価基準のいずれか1つ以上に該当しなくてはなりません。評価基準リストを少し見てみますと、「人間の創造的才能を表す傑作である」「建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである」などがあります。
ウクライナ政府は昨年秋、登録を公式に申請しました。ユネスコのオードレ・アズレ事務局長は登録の決定に際して次のように述べています。「国際社会は、自由都市、世界都市であるオデーサの保護をさらに強化しました」「戦争が続くなかでのこの登録は、世界の激動を乗り越えてきたこの街を、さらなる破壊から守るという私たちの決意を表すものです」
ユネスコは緊急手続きで審査を進めてきました。AFP通信によると、同委員会の21か国で審議が行われ、賛成6、反対1、棄権14で登録が決まりました。同時にユネスコは、ロシアによる攻撃にさらされているとして「危機遺産にも指定」しました。
それに対して、今回のウクライナ・オデーサの世界遺産登録をめぐる投票の実施を繰り返し遅らせようとしたロシアは、オデーサの住民が記念碑や建物を保護する動きに対し、自国の記念碑を「破壊している」と非難しました。
さらに、ロシア外務省は、ウクライナの申請書類に不備があったと非難し、投票は「西側からの圧力のもと」で「手続き上のルールを無視して」行われたと主張しています。「ユネスコの現在の高い基準を尊重することなく、急いで準備されたものだ」また「政治的動機によるものだ」とも批判しています。
このロシアの主張を日本の場合と比較して考えてみましょう。例えば、「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」の場合は平成19年(2007年)2月1日に、ユネスコへ「暫定リスト」を提出していますが、登録の目標年は2025年です。なんと18年かかっていることになります。
このことから、ロシアは、他の世界文化遺産の登録基準からするとウクライナの「オデーサ歴史地区」の登録は拙速すぎる、と訴えています。これも一理あるので棄権が14となった理由でしょう。
アンリ・デュナンによる文化遺産保護活動から150年、ユネスコの世界遺産条約締結から50年の時間が経っています。しかし、再び戦争が起きてしまいました。人々の命と同じく人類の生きた証である文化遺産も傷ついています。ウクライナだけでなく、ロシアの後押しで長期化しているシリアでの内戦は、10年を超えた今も続いており、シリア国内に存在する6つの世界文化遺産すべてが「危機遺産」に指定されています。
ユネスコ憲章・前文には「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。」とあります。世界文化遺産とは「平和のとりで」が形を伴ったものともいえるでしょう。今回の「オデーサ歴史地区」の即座の世界文化遺産への登録は「一日も早く無駄な争いが終わる」ことを願ってやまないユネスコとして、前文の決意を実践した行為といえるのではないでしょうか。
今回のロシアが始めた戦争をアナクロニズム(時代錯誤)という人がいます。アンリ・デュナンの言葉を借りるなら「戦争が通常というロシアの伝統的思考」によるものかもしれません。我々はそのような「伝統」を持つ国とどのように付き合っていくか、長い歴史の目線で考えていく必要に迫られているように思います。
シリアやウクライナに平和が戻ってきたら、この危機遺産に足を運んでみたいと考えています。
そして、ウクライナやシリアが復興する日を、この目で見ることが出来たら良いなと考えています。
[4]ラジオでの放送が決定しました!
昨年度実施しました「日本の食の聖地巡礼NARA」モニターツアーが、ラジオ高崎で紹介されることになりました!
当日は、下記のURLよりお聞きいただけます。
放送日:2023年6月16日(金) 12時5分~
放送局:ラジオ高崎「三堀裕雄の旅自慢」
放送はコチラから↓↓
ラジオ高崎 - JCBAインターネットサイマルラジオ|コミュニティエフエムのポータルサイト (jcbasimul.com)
[5]お知らせ
学び旅学級新聞の感想を募集しています!
実行委員長のコラムや学び旅事務局の活動について、皆様のお声をお聞かせください。
メッセージは、下記メールアドレスにて受け付けております。
皆様のご応募、お待ちしております。
【応募先】manabi-jimukyoku@kirsite.com
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